(あしあと その13・中央区の11・大通公園の5)
大通公園の西5丁目の中央に、尖塔のごとく聳える石碑。この碑は、昭和14年に建立された「聖恩碑」です。
碑の正面には、「聖恩無彊(疆)」(せいおんむきょう)の四文字が刻まれています。「聖恩」とは「天皇の恩恵(=皇恩)」を意味しており、「無彊(疆)」とは「限りのないこと」を意味しています。つまり、この四文字で「天皇の恩恵は限りないものである」ということを表しています。
この碑は、昭和11年に北海道で陸軍大演習が行われるに当たり、昭和天皇が行幸された記念として建てられました。絶え間なく水を噴き出す、碑の東側正面の竜頭と側面の南北の獅子頭を眺めていると、70年以上にわたって街の変化を見守り続けてきた悠久の時の流れを感じます。西側の碑の背面には、碑が建てられるに至った経緯を記したブロンズ板がはめ込まれており、そこには次のように記されています
「昭和十一年秋天皇陛下北海道ニ行幸シ陸軍特別大演習ヲ統監シ給フヤ十月一日ヨリ九日ニ至ル迄蹕ヲ本市ニ駐メ其ノ間各所ニ親臨シ又勅使ヲ差遣シ以テ愛民撫下ノ仁惠ヲ垂レサセ給ヘリ二十萬市民此ノ盛事ニ際會シ欣躍抃舞感激ノ情今ニ至テ猶ホ新ナルモノアリ謹デ按ズルニ明治天皇ハ明治十四年奥羽北海道ニ巡幸シ八月三十日ヨリ翌月二日ニ至ル迄鳳輦ヲ本市ニ駐メサセラレ大正天皇ハ東宮ニ在セシ時明治四十四年北海道ニ行啓シ八月二十五日ヨリ二十九日ニ至ル迄鶴駕ヲ本市ニ駐メサセラレ今上陛下ハ東宮ニ在セシ時大正十一年北海道ニ行啓シ七月十一日ヨリ十四日ニ至ル迄鶴駕ヲ本市ニ駐メサセラレタリ明治天皇登極ノ初メ優詔ヲ下シテ北海開拓ノ大本ヲ樹テ給ヒ大正天皇今上陛下亦相尋デ開拓ノ進境ヲ臠セ給フ是ヲ以テ全道ノ官民常ニ相一致シテ聖旨ニ副ヒ奉ランコトヲ期シ經営七十年ノ間文化普及シ産業欝興シ遂ニ今日ノ盛況ヲ見ルニ至レリ而シテ本市ハ實ニ北海ノ首都タルノ地位ニ在ルヲ以テ明治以來三朝ノ恩榮ヲ蒙ルコト欺ノ如ク其レ大ナリ此レ宜シク後世ニ傳ヘ以テ子孫ヲ訓ユベキモノ本市深ク此ニ鑑ミル所アリ乃チ昭和十一年行幸記念事業ノ一トシテ碑ヲ建テ紀スニ三朝ノ恩榮ヲ以テス凡ソ其ノ下ヲ過ギ其ノ事ヲ徴スル者誰カ聖恩ノ疆リ無キニ感ジ肅然トシテ尊皇愛國ノ念ヲ振起セザラン閑院宮載仁親王特ニ題字ヲ賜フ感載ニ勝ヘズ予謹デ其ノ梗概ヲ敍シ碑陰ニ書スルコト此ノ如シ
昭和十三年十一月 札幌市長従四位勲四等三澤寛一謹撰」
ここに記されたように、この碑は、明治、大正、昭和の三朝の業績を讃えたもので、石碑の題字は閑院宮載仁親王(かんいんのみやことひとしんのう)の筆によるものです。そして、この叙文を記したのが、当時の札幌市長であった三澤寛一です。
碑の西面を除く三面には、それぞれと竜と獅子の顔が象られた噴水がはめ込まれていて、毎年5月下旬ころから10月末日までの間、その口から清らかな水を吐き出しています。東面に雅楽の蘭陵王の竜面を、北面と南面にはその家来である獅子面をそれぞれ象っています。
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